Articles

コスタリカ

現地レポート2017[自然]熱帯雨林で実感した楽園

2017.2.7

「世界で一番幸せな国、コスタリカへようこそ」

コスタリカへの8日間の旅から昨日、帰国しました。2年ごとに行っている「伊藤千尋さんと行くコスタリカ――平和憲法とエコツーリズム発祥の国」で、これが第3回目です。

出発の1月30日は朝6時に起きて成田空港へ。一緒に行く仲間は現職教師や市民活動家など15人で、大半が60~70代ですが、みなさん元気者です。12時間かけて着いた米国ダラスで入国審査を受けました。

入国制限をするトランプ政権になってさぞ厳しい審査が待っているかもしれないと思いきや、今や画面の日本語に従ってチョチョチョッと入力するだけでした。書類を書くこともなく、係官から厳しいチェックを受けることもなく、これまでで最も簡単に通過しました。

ダラス空港で7時間待ちし、飛行機を乗り換えて4時間でコスタリカの首都サンホセに到着したのは同じ日の夜7時でした。ここまで23時間もかかっていますが、時差の関係で日付は同日です。空港の壁に「世界で一番幸せな国、コスタリカへようこそ」というポスターが貼ってありました。

カリブ海沿いの国立公園、そして熱帯雨林へ

翌日は朝6時に起きて貸し切りバスに乗り、山を越えてカリブ海沿いの国立公園へ。道の両側にバナナ園が広がります。切り取ったばかりのバナナがレールから吊るされて運ばれる風景を見ながら進むと、途中の樹の枝にはナマケモノがぶら下がっていました。

川に行きあたると、ここからはボートです。雨が降り出しました。熱帯のスコールです。ライフジャケットをつけて乗り込みました。

船外モーターで勢いよく飛ばします。両岸には熱帯雨林が広がります。1時間後、村の船着き場に到着しました。バンガローのホテルに入ります。庭の樹に鮮やかな黄色の鳥オオハシがとまっています。枝にはイグアナが寝そべり、「世界一美しい蝶」と言われるモルフォ蝶がヒラヒラと飛び交います。地面には鮮やかな緑色のトカゲも。

ご飯に豆と芋、煮込んだ牛肉の昼食を食べたあと、早速、参加者に第一回目の講義です。コスタリカの概要、環境への取り組み、平和憲法ができたいきさつなどを1時間半、話しました。その後は再びボートに乗って集落に行き、ウミガメを保護しているNGOの人々から活動をうかがいました。

豪雨なのに乗り込んだのは屋根なしボート

翌日は朝4時に起きると猛烈な豪雨でした。すぐそばの川の水がごうごうと音を立てながら流れます。僕は傘を忘れてきたので、タオルを頭からかぶって船着き場へ走りました。朝飯前にボートで2時間かけて周囲の原生林を回ろうというのです。

う~ん、この雨の中を……どうなることやら。しかも、やってきたボートは屋根がありません。景色がよく見られるように、というありがた迷惑な配慮です。

でも、そこはプロです。船頭さんは僕のような雨具を忘れてきた乗客のために、身体がすっぽり入るポンチョを用意してくれていました。ライフジャケットの上からポンチョをかぶり、雨の中を飛ばします。

両岸はうっそうとして熱帯雨林の原生林です。川面からつき出た木にはサギや鵜などの鳥がとまり、水面から顔を出すワニ、木の上にはトカゲやイグアナ、樹上にはホエザルなど熱帯の自然がいっぱいです。

なにせコスタリカは国土の4分の1を国立公園や自然保護区として環境を保全しており、そのため地球の全生物種の6%が生息しているのです。エコツアーが発祥した地であるだけでなく早くから野生生物基本法を制定し生物の保護に努めている成果が表れています。憲法には環境権が明記されています。

日本人というだけでモテる?

ボートの舳先で説明してくれた原田信也君は好青年です。日本ではプロスキーヤーを目指しつつ環境NGOの活動をしていました。勤めていた広告会社が傾いたのを機に2003年、コスタリカの環境ツアーに参加したのがこちらに来た理由です。そのまま森林再生プログラムに半年間従事し、国立公園のアシスタントになるかたわら日本食レストランで寿司を握り、カジノのために導入されたパチンコの遊び方を教えるさすらいの日々。

日本に帰って生まれ故郷の新宿の街を歩いていると通行人がぶつかります。ああ、ゆっくりしたコスタリカの速度に慣れた自分に日本の生活はもはや無理だと観念し、コスタリカに住み着いてみると美女のガールフレンドができました。一緒に旅行する約束をして20万円を預けると、彼女はその金を頭金に車を買い、その後の月賦も彼が支払うことになりました。

何かおかしいと思いつつも彼女に貢ぎ続けるお人好しな性格そのまま、今回のツアー参加者のみんなから好かれていました。「コスタリカでは日本人というだけでモテます」と彼は言うのですが、この点については信じないようにと彼の上司が言います。

ボートでの密林ツアーを終えて昼食を食べたあと、ホテルを出てボートとバスでコーヒー農園を訪ねました。コーヒー摘みを終えたばかりの村人が篭を手に帰宅中です。整然とコーヒーの樹が並ぶ園内を歩いて見回ります。赤いコーヒーの実をつまんで口に入れると、果肉の中からクリーム色のコーヒーの実が出てきました。


Copyright©Chihiro Ito. All Rights Reserved. サイト管理・あおぞら書房
●●●