Song Stories

日本

集団就職の仲間と歌った「今日の日はさようなら」

ゆったりとしたメロディーで「いつまでもたえることなく 友だちでいよう」と夢のような響きで歌う。森山良子さんの声で世に広まったのは、今からちょうど50年前の1966年だ。

当時の日本は貧しかった。地方の中学を卒業して集団就職で東京に出る若者が多かった。孤独で慣れない都会暮らしを励ましたのが、警視庁の少年課に勤務していた大野重男さんだ。仕事とは別にボランティアで彼らの相談相手となった。

やがて大野さんは警官をやめ、「ハーモニィサークル」という会を立ち上げた。「すべての人に対して、その尊さを信じよう」を第一に、相手の身になって考えることなど7つの憲章を作った。簡単に人生をあきらめるな、と諭した。

クリーニング店やそば屋に勤める若者たち、裁判官も集まった。集会の場所は都内を転々としたが、やがて大野さんは調布市に家を借り、活動拠点を市内の児童館に移した。

かつて大野さんが家庭教師として教えた金子詔一さんは大学院を中退し、専従スタッフとなって活動に参加した。集いの終わりに金子さんのギターで合唱したが、金子さんは独自の歌を創ろうと考えた。

会員のカンパで金子さんは西ドイツを訪れた。まだベルリンの壁があり、見張りの兵士が立っていた。兵士と目を合わせるのが怖くて見上げた壁の上を、ハトが自由に飛んでいた。

そこで生まれたのが「空をとぶ鳥のように 自由に生きる」という文句だ。ギターを弾きながらジャズの技巧を入れつつ作詞・作曲した。みんなで車座になって歌った。

金子さんの親せきのプロデューサーの縁で、当時の人気バンド、フロッギーズが最初に歌った。彼らの後輩の森山良子さんがデビューしてレコードに吹き込んだ。来日したジョーン・バエズは日本語で歌った。NHKの「みんなの歌」でも放送され、1973年には高校1年の音楽の教科書に載った。

会は公益財団法人ハーモニィセンターに発展した。今も子どもたちにキャンプや乗馬体験を楽しんでもらう活動を行っている。

https://harmonycenter.or.jp/about/

金子さんは今、静岡県で国際理解教育支援活動をしている。連絡するとジョーン・バエズが歌うこの歌にオバマ大統領の演説をかぶせたCDを贈ってくれた。演説と歌が驚くほどぴったりとはまっている。

歌が生まれた調布市ではこの9月11日に第3回「歌い継ぐ会」を、つつじヶ丘児童館で行う。年内に市民の手で歌の記念碑を、児童館に建立する計画だ。


今日の日はさようなら
作詞・作曲:金子詔一

いつまでも絶えることなく
友だちでいよう
明日の日を夢見て
希望の道を

空を飛ぶ鳥のように
自由に生きる
今日の日はさようなら
またあう日まで

信じあうよろこびを
大切にしよう
今日の日はさようなら
またあう日まで
またあう日まで

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